コーチには、社内コーチとして部下へコーチングをしている人からプロのコーチまで、様々な人がいます。同じコーチングとはいえ、コーチの熟練度によってコーチングの品質に違いがあると考えられます。しかし、本当に違いはあるのでしょうか。あるとしたらどんな違いがあるのでしょうか。

コーチの熟練度を示す尺度のひとつに、国際コーチ連盟のコーチング認定資格(以下、「ICFの資格」)があります。最もハードルが低い条件の資格でも、ICFに認定されたコーチングプログラムの修了、100時間以上のコーチング実績、知識を問うテストの合格が必要です。
今回は、ICFの資格を持つコーチと持たないコーチのコーチングを比較することで、熟練度によるコーチング効果の違いについて探りました。

分析には、コーチのコーチングについて、クライアントがエバリュエーションするウェブサービス「Ayce」のデータを用いました。

最初に、コーチング終了時のクライアントの「目標達成度」「満足度」の違いを比較します。

図1 ICFの資格有無による、クライアントの「目標達成度」「満足度」の違い

n=113人のコーチ(ICFの資格有り 54人、ICFの資格無し59人)
7段階評価(1.全くあてはまらないー7.とてもよくあてはまる)
コーチング研究所調査 2016年

「目標達成度」「満足度」ともに、ICFの資格を持つコーチの方が、資格を持たないコーチより高い評価となっています。資格を持つコーチの方が、総合的に良質のコーチングを提供していることがうかがえます。

次に、「コーチングの効果」に、どのような違いがあるのかを見てみます。

図2 ICFの資格有無による、クライアントの「コーチングの効果」の違い(差の大きい順に記載)

n=113人のコーチ(ICFの資格有り 54人、ICFの資格無し59人)
4段階評価(1.変化はなかった 2.やや向上した 3.向上した 4.とても向上した)
コーチング研究所調査 2016年

ICFの資格を持つコーチのコーチングを受けたクライアントは、全ての項目において資格を持たないコーチより、「コーチングの効果」を高く評価していました。特に、差が大きかったのが次の3項目です。

・今までとは違うやり方を選択すること
・自分へのパフォーマンスをより発揮する方法を把握すること
・相手と考え方や価値観が違っても、合意点を見つけること

ICFには、"コーチの望ましい行動「コア・コンピテンシー」"があり、資格試験の基礎にもなっています。その中の「行動のデザイン」のカテゴリーに「新しい行動をとる機会をクライアントと共に作り出す能力」という項目があります。今回の調査で、ICFの資格有無の違いで最も差が大きかった「今までとは違うやり方を選択すること」は、その項目に該当しています。クライアントは、セッション中の会話のみで目標達成を成し得ることはなく、必ず「行動」が必要となります。ICFの資格を持つコーチは、そこへの働きかけに長けていると考えられます。

今回の分析からICFの資格を持つ熟練度の高いコーチは、クライアントから総合して高い評価を得ていることが明らかになりました。また、コーチングの効果の中でも、「今までとは違うやり方を選択する」、「自分のパフォーマンスをより発揮する方法を把握する」、「相手と考え方や価値観が違っても、合意点を見つける」の3項目に、特に違いが見られました。

Core Competencies (ICF) 国際コーチ連盟が定める核となる能力水準

調査概要

調査対象: コーチ113人(コーチング終了後に実施したエバリュエーション431データ)
調査期間: 2016年4月~10月
調査方法: ウェブアンケートへの回答
調査内容: Accelerate your Coaching Effectiveness (Ayce)