管理職と聞くと、主な役職として部長や課長を連想する人が多いのではないでしょうか。
この部長と課長の間には、様々な違いがあります。例えば、管轄する事業の範囲、決裁権、部下の人数といったものです。今回は、部下から見たリーダーシップという視点で、部長と課長の違いを見ていきたいと思います。

今回の分析では、リーダーシップに関する53項目(ビジョンの提示や部下との関わり方など)について、部長と課長の違いを比較しました。調査対象は、部長319人とその部下2,893人、課長412人とその部下2,305人です。

部長が課長より、部下の評価が高い項目は次の通りでした(図1)。

図1. 部長が課長より高評価のリーダーシップ 上位5項目(部下回答)
図1. 部長が課長より高評価のリーダーシップ 上位5項目(部下回答)

「ビジョン」に関する2項目が入っています。「会社全体を考える」という項目もあり、部長は課長より時間的にも組織的にも、より広い視野を持って動いていることが分かります。また、大勢の前で話す機会が増えるためか、「プレゼンテーションが上手」という項目が入っています。さらに、課長より「仕事に情熱を持っている」と感じられることが多いようです。

課長から部長へ昇進した際は、これらの項目を意識することが、部長職へより早く適応することへ繋がると思います。

先程とは逆に、課長が部長より、部下の評価が高い項目も見られました。結果は次の通りです(図2)。

図2. 課長が部長より高評価のリーダーシップ 上位5項目(部下回答)
図2. 課長が部長より高評価のリーダーシップ 上位5項目(部下回答)

「部下と話す時間を設ける」ことに関する2項目が入っています。「話しやすい雰囲気」があるという項目もあり、課長が部下との会話に多くの時間を使っていることが分かります。また、「公平さ」「約束を守る」といった部下との信頼関係を示す行動も評価されており、現場のリーダーとして部下と関わっている姿勢がうかがえます。

部長の視点から考えると、部長は課長ほど部下と話す時間を確保するのが難しいのかもしれません。部長は部下との会話時間を確保するよう努めつつ、より少ない会話時間を活かす工夫が求められるといえるでしょう。

今回の分析では、部長、課長それぞれの傾向があり、部長の方が課長よりも低い評価の項目も見られました。このことから、課長のリーダーシップを強化したものが、部長のリーダーシップであるという簡単な話ではないことが分かります。部長と課長の役割や働き方に対応して、それぞれ違うリーダーシップがあると考えられます。

調査概要

調査対象:292社(部長319人とその部下2,893人、課長412人とその部下2,305人)
調査期間:2012年9月~2016年4月
調査方法:ウェブアンケートへの回答
調査内容:Leadership Assessment