コーチがクライアントにフィードバックを求めることが、クライアントの目標達成の可能性を高める
なぜ、コーチはクライアントにフィードバックを求めるべきなのか
コーチングにおける「フィードバック」とは、「事実を相手に伝えること」です。
クライアントが目標に正しく向かえているのか、もしくは軌道がずれているのか。ずれているとしたら、どの程度ずれているのか。コーチのフィードバックは、クライアントを目標達成に導く重要な関わりです。
そもそも、コーチの目標はクライアントの目標達成です。
すると、コーチが効果的なコーチングができているのかについて、クライアントにフィードバックを求めることは、コーチの重要な関わりとも考えられるのではないでしょうか。
そこで、コーチング研究所では、コーチがクライアントにフィードバックを求めることが、「コーチの関わり」や「コーチングの効果」とどのように関係しているのかを調査しました。調査では、コーチングを受けたクライアント854人のデータを2つのグループに分け、「コーチの関わり」に対する評価と「コーチングの効果」について比較しました。
A:コーチがクライアントにフィードバックを積極的に求めていたグループ
B:コーチがクライアントにフィードバックを積極的に求めていなかったグループ
表1は、「コーチの関わり」に対する評価の比較です。
コーチの関わり | 平均値 | 差分 [ A-B ] |
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---|---|---|---|---|
グループA (n=412) |
グループB (n=442) |
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目標支援 | コーチの関わりは、私の目標達成を促進している | 6.2 | 5.3 | 0.9 |
承認 | コーチは、私の目標に向けた行動に対してアクノレッジメント(承認)をしている | 6.2 | 5.3 | 0.9 |
質問 | コーチは、私に考えさせるための質問をしている | 6.3 | 5.4 | 0.9 |
コーチは、私が新しい視点を得るような質問をしている | 6.1 | 5.2 | 0.8 |
グループA:「コーチは、コーチングに対するフィードバックを私に求めている」のクライアント評価が平均以上
グループB:「コーチは、コーチングに対するフィードバックを私に求めている」のクライアント評価が平均未満
※n=854、7段階評価(1. 全くあてはまらない〜7. とてもよくあてはまる)
コーチング研究所調査 2016年
コーチがフィードバックを積極的に求めていたグループAのクライアントの方が、コーチの関わりである「目標支援」や「承認」、「質問」を高く評価していました。つまり、クライアントが自身の目標達成に役立っていたと感じていることが分かります。このことから、コーチがフィードバックを求めることは、クライアントにより効果的に関わることを可能にするといえます。
次に、表2はクライアントが実感している「コーチングの効果」の比較です。
コーチングの効果 | 平均値 | 差分 [ A-B ] |
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---|---|---|---|---|
グループA (n=412) |
グループB (n=442) |
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目標の明確化 | コーチングによって、私の目標や方向性が明確になっている | 6.0 | 5.3 | 0.7 |
行動の促進 | コーチングによって、私は自発的な行動をおこしている | 5.9 | 5.2 | 0.7 |
思考の促進 | 私は、コーチに話をすることで、新しい気づきを得ている | 6.1 | 5.3 | 0.8 |
パフォーマンス向上 | コーチングは、私の仕事に良い影響を与えている | 6.0 | 5.3 | 0.7 |
グループA:「コーチは、コーチングに対するフィードバックを私に求めている」のクライアント評価が平均以上
グループB:「コーチは、コーチングに対するフィードバックを私に求めている」のクライアント評価が平均未満
※n=854、7段階評価(1. 全くあてはまらない〜7. とてもよくあてはまる)
コーチング研究所調査 2016年
「目標の明確化」や「行動の促進」、「思考の促進」、「パフォーマンス向上」についても、コーチがフィードバックを積極的に求めていたグループAのクライアントの方がコーチングの効果を強く実感していました。この結果から、グループAのクライアントの方が、コーチングが目標達成に役立っていたと感じていることが分かります。つまり、コーチがフィードバックを求めることは、クライアントの目標達成をより促進するといえます。
今回の調査から、コーチがクライアントにフィードバックを求めることが、コーチの目標であるクライアントの目標達成に有効であることが分かりました。
より良いコーチングを提供するために、まずは自分自身のコーチとしての関わり方についてクライアントにフィードバックを求めてみるのはいかがでしょうか。
調査概要
調査対象:コーチングを受けたクライアント854人
調査期間:2015年4月~2016年1月
調査方法:コーチング終了後に、ウェブアンケートへ回答
調査内容:D-meter,「コーチの関わり」「コーチングの効果」, 7段階評価