近年、経営者がエグゼクティブコーチをつけることが多くなってきました。経営者は、業績向上をはじめ、組織変革、ブランディングなど、さまざまな成果を求められています。経営者は、コーチと対話することで高い成果を出すことを目指しています。

コーチング研究所では、世界28ヶ国2,512人のクライアントデータを分析し、エグゼクティブ・コーチングの成功要因を、調査レポート「成果を出す経営者とエグゼクティブ・コーチング(※1)」にまとめました。

今回は、その中から経営者の成果を高める「コーチの関わり方」について分析した結果の一部をご紹介します。

分析に使用したアンケート調査「CSES」は、以下の3カテゴリで構成されており、コーチング終了時にクライアント自身が回答します。(質問項目の詳細は「CSESの質問項目一覧」を参照)

A. コーチング全体に対するクライアントの効果実感(3項目)
B. コーチングによってクライアント自身に起きた変化(19項目)
C. クライアント自身に対するコーチの関わり方(18項目)

図.1は、エグゼクティブ・コーチングの成果の度合いを調べたものです。

図.1
エグゼクティブ・コーチングの経営者の変化
「コーチングにおいて設定していた目標を達成した」

高い成果を出した経営者(図.1「とてもあてはまる」の17.7%)を【経営者High Performer(HP)群】、それ以外の経営者を【経営者Non-High Performer(non-HP)群】として、「コーチの関わり方」が2つの群でどのように異なるのかを調べました。

その結果、高い成果を出している経営者に対しては、エグゼクティブコーチは「目的や目標に向けた対話」をしていることが分かりました。(詳細は「成果を出す経営者とエグゼクティブ・コーチング」4-1を参照)

さらに、役職(経営者と経営者以外)と成果(HP群とnon-HP群)で4グループに区分し、「コーチの関わり方」の違いを分析しました。(図.2)

図.2
データ区分(役職×成果)

結果、役職の違いで唯一有意差が見られた特長は「アンケートやワークシートなどのツールを使う」というコーチの関わり方でした。(図.3)【non-HP群】では【経営者】と【経営者以外】に有意差が無いのに対し、【HP群】では経営者の方が有意に高い評価になりました(有意水準:p < .05)。

図.3
成果の高さ別にみた経営者と経営者以外の違い
「コーチはアンケートやワークシートなどのツールを使っていた」

つまり、エグゼクティブ・コーチングでの「ツールの活用」は、経営者の成果をより高めるために有効なことが分かりました。

「経営者のジレンマ」と言われるように、役職が上の立場になるほど、周囲からのフィードバックが重要な役割を果たすにも関わらず、フィードバックを得ることが難しくなると言われています。

経営者が高い成果を出すために、アンケートが貴重なフィードバックの機会を作り出すツールとして効果を発揮していると考えらえます。実際に、コーチ・エィが提供するエグゼクティブ・コーチングでは、経営者ごとのテーラーメイドアンケートを実施することをお薦めしています。

今回の分析の結果、「目的や目標に向けた対話」は「クライアントの成果」と関係があることが分かりました。そして、クライアントが経営者であるとき、特に「ツールの活用」が有効であることが分かりました。
エグゼクティブ・コーチングにおいて質の高い対話とツールを組み合わせることで、経営者の成果を高めることができると考えられます。

※1 「成果を出す経営者とエグゼクティブ・コーチング」CSES調査レポート
調査対象:コーチングを受けた、世界28ヶ国2,512人のクライアント
調査方法:ウェブシステム(Coaching Skills Evaluation System)