株式会社コーチ・エィ(代表取締役社⻑:鈴⽊義幸)は、コーチ・エィの提供するサービスを考察した学術論文「組織開発としての現地化プロセス ータイ味の素社における『iCHANGE』の事例分析ー」が発表されたことをお知らせします。論文では、組織内で対話の創発を促す取り組みが、社員の主体性を喚起し、自律的経営が推進されることが示されています。以下に論文の要約をお伝えします。
概要
本論文は、タイ味の素社 元副社長 嵐田高彰氏と小樽商科大学商学研究科尚井俊輔准教授による共同執筆で、『金沢学院大学紀要 第20号』に掲載されたものです。タイ味の素社におけるチーム・コーチングのプロジェクト「iCHANGEプロジェクト」の事例を調査・分析することで、日本企業の国際経営における重要課題である「経営の現地化」に対する「対話型組織開発」の貢献を考察しています。
タイ味の素社が対話型組織開発に取り組んだ背景
多国籍企業のグローバル経営における経営の現地化は、これまで現地法人への権限移譲と現地人材を登用することで進められてきました。タイ味の素社でも従来の意味での現地化を推進していましたが、急速に変化する市場や技術環境に対応するためには、従業員の主体性に働きかけ、エンゲージメントを高める必要があると考えました。
そこで、従業員一人ひとりの変化が組織文化の変革につながるという考えのもと、2018年より対話型組織開発「iCHANGEプロジェクト(以下、iCHANGE)」をスタート。プロジェクト名には、「主語を『i(私)』にして、自分から変わる」という意味を込めました。プロジェクトのゴールを「タイのスタッフが、新しい実りのある企画や多くの挑戦を通して、指導的役割を担うことができる活気のある組織を創造すること」とし、タイ味の素社が全体の企画・主導を、コーチ・エィがチーム・コーチングの構造を提供しました。
コーチングの実践による組織へのインパクト
論文では、チーム・コーチングを中心としたiCHANGEプロジェクトは、タイ味の素社に以下の変化をもたらしたことが報告されています。
1. コミュニケーションの変化
以下の図が示すのは、この取り組みでコーチをしたリーダーの、コミュニケーションに対する態度の変化です。リーダーはコーチングを行っていないときでも相手の話を良く聞くようになり、そのことによって自身の部下がアイディアを出すようになり、他の仕事に対しても積極的に参加するようになるという変化がみられました。
他にも、社内会議の総時間が削減されたり、工場等の品質トラブル・クレームに対処する想定期間が、短縮されるなどの変化がありました。
2. 新たな主体の形成
iCHANGEを通して、「ロール・モデルになる」という言葉が使われるようになりました。ここでのロール・モデルとは、「自身が変わる・変えること」というiCHANGEの考え方や目的を行動に移す主体性のことを意味します。
3. 職場関係の変容
最も顕著な例として、プログラムの参加者が、自主的にコーチングを通した職場改善サークルを組織化していることがあげられ、会社や国境を越えたiCHANGEのサブ・プロジェクトが、経営陣が指示することなく発足・実施されています。
たとえば、勤続20年以上のタイの工場長はiCHANGEでの活動が経営幹部に認められてミャンマーの工場長に抜擢されたり、技術部門の日本人派遣者が、現地市場独自の事業開発を検討するなど、現地従業員、派遣者に限らず両者が活躍し、新たな価値の創造に向けて協力関係を築いています。
まとめ
本論文では、コーチングによる対話を社内で創発する対話型組織開発を実践することにより、社員が自身と組織の関係性を見直し、役割や主体性を再定義することが示されました。そしてそのことにより、組織のヴィジョンやミッションの実現に向けた自律的経営が進むことが明らかになりました。
本レポートの全文は、こちら(P106-P116)からダウンロードしてご覧ください。
株式会社コーチ・エィ
コーチ・エィは、1997年に時代に先駆けて日本でコーチング専門トレーニングをスタートさせたコーチング・ファームです。世界5ヵ所に拠点を構え、5つの言語(日本語、英語、北京語、広東語、タイ語)でグローバルにサービスを提供。個々人の成長の支援にとどまらず、個人を取り巻く関係性に焦点をあて、組織全体の成長を支援する対話型組織開発を展開しています。また、リサーチ部門のコーチング研究所(CRI)の分析データを基に、エビデンスに基づいたコーチングを行うとともに、豊富なコーチング実績のデータを解析して、リーダーシップと組織活性化のメカニズムやコーチングの有用性などに関するレポートを発表しています。
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